「全てを正確に他の言語に翻訳することはできない」ということは知っているかもしれません。それぞれの言語にはその言語特有の、翻訳できない語彙が数多く存在します。けれど、簡単に訳せそうなシンプルな単語でも、他の言語では全く同じ意味になるとは限らないって知ってましたか?
例えば、英語の「water=水」と覚えていますよね。けれども実は、「water」と「水」はまったく同じ意味ではないんです。
言語によって、単語が持つ意味の範囲や、あるグループ内における単語の位置付けが違ったりします。
それでは実際に日本語、英語、フランス語を比べた4つの例を見てみましょう!
1. 水とお湯
英語の「water」の意味は簡単に言うと、「透明で匂いも味も無い液体」と定義されます。フランス語の「eau」も同様です。温度による定義はありません。
一方、日本語では温度が上がり熱くなると、「水」ではなく「お湯」と呼ばれるようになります。「それなら英語にも「hot water」という言葉があるじゃないか」と思うかもしれません。けれど、これは日本語の「水とお湯」の関係とは少し違うのです。
水の温度によって英語では「cold water, warm water, hot water, boiled water」といった呼ばれ方をします。しかしこれらはどれも液体である限り、あくまで「水」なのです。私たちは「熱い水」とは言いませんよね?このように日本語の水とお湯は別のものとされ、全く異る単語を使い分けられるのに対し、英語では水もお湯も水の一部とみなされているのです。
温度を強調する必要が無い限り、沸騰したお湯を指して「その”water”の中にパスタを入れて」と言うことが可能なのです。
2. 蝶と蛾
日本語で蝶(ちょう)と蛾(が)は別の昆虫として認識されていますよね。英語でも同じです。しかし、フランス語ではこの2種類は区別されていません。
日仏辞典で「蛾」を調べると、「papillon de nuit」と出て来ます。直訳すると、「夜の蝶」です。けれどもこの単語は強調させたい場合にのみ使われ、普段フランス人は蛾を見て「蝶(papillon)だ!」と言います。蛾は蝶の一種と見なされているのです。
3. 椅子とひじ掛け椅子
日本語に言葉としては存在する「ひじ掛け椅子」。英語では「armchair」と言われ、「ひじを掛けるところがある椅子」という日本語と同じ構造です。ただ、普段日本人はあまり「ひじ掛け椅子」とは言いませんよね?単に「椅子」と言い、ひじ掛け椅子は椅子の一種とみなしています。
ところがフランス語では「(ひじ掛け部分が無い)椅子=chaise」、「ひじ掛け椅子=fauteuil」と明確に区別するのです。これはフランス語に限らず、他にもこの2つに全く異る単語が使われ、はっきりと区別する言語は多数存在します。
4. 靴と長靴
日本語の「長靴」は文字どおり「長い靴」。長靴は靴の一種として認識されています。
しかし、英語の長靴の定義を辞書で見てみると、”a type of covering for the foot which also covers the ankle and sometimes also part of legs.”、つまり「くるぶしまで(時に足首より上まで)の足を覆うもの」とされ、shoe(靴)という単語は一切含まれていません。靴と長靴は異る種類の履物(はきもの)とされているのです。
さらに深く見てみると、英語の「footwear」には靴下も含まれますが、日本語の「履物」に靴下は入りません。ここから、「footwear=履物」ではないということがわかります。
最後に
外国語を勉強していたり、流暢に話せても、こういったことはなかなか気づけません。母国語を話す時も「この単語はどういうグループに入るか」なんて意識しないですよね。
外国語を話す際、その言語も母国語と同じようにグループ分けされていると思い込んでしまいがちです。辞書には「water=水」と書いてありますし、どの単語も母国語に対応していると思ってしまうのも無理はありません。
ただ、文脈やその時の状況から「理解できている、相手とコミュニケーションがとれている」と思っていても、言葉の認識の違いから誤解が発生してしまうことがある、ということを頭の隅に置いておくといいかもしれません。
あわせて読む:太陽は赤ではなく黄色?フランスのリンゴは緑色
いかがでしたか?もっと色々な言語を学びたい!と思ったら、LingoCardsをチェック!
参考: 鈴木孝夫「日本語と外国語」
Hi, just wanted to tell you, I loved this post. It was funny.
Keep on posting!